ビジネスシーンで活きるシステマ。
第1弾は、2013年3月のセミナー後の懇親会で、システマ創始者であるミカエル・リャブコから直接教えていただいたことをお伝えします。
この内容は、2013年8月当時、私のfacebookに投稿していた内容を再編したものです。
現在のミカエルがどう思っているかは、また少し違う可能性もありますので、その点はご了承いただければと思います。
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企業の大小、個人経営、業種に関わらず、仕事をしていると予約や発注を受け付けたり、電話や窓口、応接で接客をする場面があります。2019年現在では「やりとりはメールのみ」というケースもあるかもしれません。
ミカエルに質問した当時、私は都内の職場に電車通勤していました。
性格はとにかくビビりで、駅や電車で大声を出している人を見たり、職場で人が怒鳴られているのを聴いているだけで心臓がキュッと縮むようなタイプでした。
システマを始めてからは、危険や恐怖を感じるような場所からは離れることを学びましたが、職場ではそうもいきません。
自分が窓口担当である限り、常に席を外していることはできないし、受付中に「あ、イヤなんで失礼します」とも言えません(笑)
卒なく対応している人もいたのでそういう人を見習えばよかったのですが、当時の私には永遠にできないことのように思っていました。
2013年の3月、皆がいる前で恥ずかしかったのですが、どうしてもミカエルの答えが聞きたくて尋ねました。
「私は心を強くしたくてシステマを始めました。
でも怖い人が来るとやはり緊張したり、パニックになってしまいます。
そういう時は、やはりブリージング(呼吸する)ですか?」
私の予想では、おそらく「ブリージングしなさい」ではないかな、と思っていました。
そして、その他の4つの原則(呼吸し続ける、動き続ける、良い姿勢を保つ、リラックスする)を維持するようにとか、そんな答えだろうと予想していました。
自分がパニックになる瞬間や鼓動が速く打ち出すのは、ほんの一瞬です。
ぐわーっと一旦心臓が縮みあがると、なだめるのには結構時間がかかります。
その場を離れることができても落ち着くのに時間がかかるのに、他人の怒りや敵意などの緊張(テンション)を浴びながら呼吸しても、何もなかったように落ち着いて対処するのは、多分私には無理だろうなぁ…と思っていました。
ミカエルみたいなマスターならできるんだろうな、とか。
ミカエルの答えは違いました。
「ブリージング…?」と小さく言って小さく首を振りました。
ミカエルの答えはこうでした。
…怖い人には
「
①経験」でしょう。経験を積むことで馴れる、の意味。
それか、
「
②相手が想像しているのと違う反応をする(怖がるだろう、と怒鳴ってくる相手に対して何ともないフリをする)」。
「
③すごい包丁を持っているぞ、という顔をする」。
※この時、ミカエルは眉根を寄せて、さも険悪な顔つきをして脇に手を差し込み、刃物を持っているようなフリをしました…が、実際はちょっと可愛くみえました。
「
④ひたすら怯える(フリだけする)」
※ミカエルはプルプル震えて両手を胸の前で小さく握り、目を見開いてさも怯えている真似をしました。あわわ…という声も含め、かなりヒヨコっぽい感じでした。
そして最後に少し諦めたように肩をすくめ、
「
⑤いろいろな人がいるのは世界共通でしょう」と。
なるほど。
「まあ
⑥ブリージングも必要だけどね」。
一番にきた経験という言葉が、ストンと腑に落ちました。
まだまだ社会人として経験が足りなかった私にも、想像を絶する厳しい戦場を生き抜き、仲間を救い、生還し続けて今目の前でホッケの開きを美味しそうに食べていてるミカエルが口にした、実感のこもったその言葉が、もの凄い実感を伴って、優しく胸に響きました。
そして質問をしてしばらく経ってから、システマを始めた頃に勘違いしていた「システマなら今すぐ何でも解決できますよね!で、どうやってやるのですか?」という類の質問をしていた事に気がつきました。
それは、そのようでいて、少し違うんですよね。
システマは、ミカエル自身の体験から「殺しに来た相手すら癒やす」と表現されることがあります。
書籍などでこのエピソードを目にする度に、信じがたいけどミカエルならあり得るだろう、と思う自分がいます。
お店や会社に来るお客さんは、何も殺傷しにやって来ているわけではありません。
基本は何か頼みたくてやってきます。
相手が計画的に犯行を企ててくるような職場なら、こちらも然るべき体制をとって自衛するしかないので、また別の対応が必要になりますが、それはまた別の話です。
ミカエルが一番に「経験」といったことで、私は当時の「自分が抱えていた恐怖が何だったか」に気づきました。
本当に困ったお客さんに直接対応したことがないのに怖い。
万が一対応して誤りを伝えて事が大きくなったら怖い。
その失敗で自分の身に何か及んだら怖い。
周りの目が怖い…など。
まったく未経験だったわけではありませんでしたが、まだまだ甘い感じでした。
そして半年近く経ったある日、ついに向かい合う時がきました。
その時、何を思ったか、「ミカエルが教えてくれたことの②〜④は使えないのでは…」と仲間と話していたにもかかわらず、なんと無謀にも試そうとする自分がいました。それだけ落ち着いて臨めたようでした。
時々そっと深く息を吐いたり、見えない部分を動かしたり、背筋を伸ばしたり。
表情で相手に伝わらないかな、と変顔もしてみましたが、相手の目には止まらなかったようで、効果はありませんでした。
脈があがらないよう自身をコントロールするのに少し焦ったりしましたが、その時は、何を言われても、自分が傷つくこともパニックになることもありませんでした。
この場面をもっと沢山経験できれば、きっともっと穏やかでいることができるんだろうなと考える余裕さえありました。
受け止めながら返すこともできるかもしれない。
お客さんがシステマの練習パートナーだと思えば、そんなに怖くないかも…とまで思いながら、ミカエルの変顔を思い出していました。
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それから大分月日が経ち、5年後に私は職場を去りましたが、今、同じような質問をミカエルにするかといえば、もうしないような気がします。
5年の間にはいろいろな事があり、ミカエルが教えてくれたことを思い出す間もなく混乱したまま終えてしまったこともありました。それはただ思い出すと苦いことのままですが、「そういうこともあった」と噛みしめると、当時は愚痴まみれだった「ただの苦い体験」が「経験」に生まれ変わっていくのを感じるようになりました。
辛いことは、経験しないに越したことはありません。
でも、時が経ち、経験するに越したこともないんだと思えた時、その経験が活きる時が来ているのかも、と思います。
経験している間は、それどころではないんですけど!!(笑)
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ご精読いただき、ありがとうございました。
第1弾でミカエルが登場して最終回みたいになってしまいましたが、ほそぼそ、続けていきたいと思います。
これからもよろしくお願いします!
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